「憲法を読む」(毎日新聞連載)

憲法をよむ:/6 戦争の放棄 自衛・制裁、学者間で意見相違(毎日新聞 2013年11月27日(水))

<戦後70年に向けて>
憲太君 今回は有名な第9条だね。
先生 自衛隊との関係で、戦後ずっと論議を呼んできた条文ですね。「戦争の放棄」と題された第2章は、この第9条だけでできています。憲法前文(ぜんぶん)でうたった「平和主義」を具体化した条文で、1項で「戦争の放棄」、2項で「戦力の不保持」と「交戦権の否認」を定めていますね。
憲太 憲法ができた時、「戦争の放棄」という考え方は新しかったの?
先生 これは既に1928年に結ばれた「不戦条約」で宣言されていた内容です。大きな犠牲を出した第一次世界大戦の反省からパリで結ばれた条約ですね。ただ、「戦力の不保持」まで定めた憲法は当時、世界で例のないものだったと言われています。
憲太 1項には「戦争」や「武力の行使」って言葉があるけど、意味がそれぞれ違うの?
先生 「宣戦布告」という言葉がありますね。今から戦争行為を始めるぞという通告で、国際的なルールで決まっている手続きです。1項では、こうした手続きを踏んで始める軍事行動を「戦争」、手続きを踏まないものを「武力の行使」としています。
憲太 1項は「永久にこれを放棄する」としているけど、日本はどんな戦争もできないってこと?
先生 戦争はその目的で、侵略、自衛、制裁に分けられます。憲法学者の多くは、1項で禁じられているのは侵略目的の戦争だけだが、2項を含めた条文全体で考えると、自衛や制裁目的も含め、一切の戦争が放棄されていると考えています。ただ、この点にはいろいろな意見があり、自衛や制裁のための戦争は禁じられていないと考える学者もいます。=次回も第9条です
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<現行憲法
第9条1 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又(また)は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。


<自民案>
第9条1 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動としての戦争を放棄し、武力による威嚇及び武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては用いない。
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★条文を音声で
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