「憲法を読む」(毎日新聞連載)

憲法をよむ:/7 戦力の不保持 自衛権 自民、解釈の変更検討(毎日新聞 2013年11月28日(木))

<戦後70年に向けて>
憲太君 第9条は自衛戦争も放棄していると考える憲法学者が多いってことだけど、外国が攻めてきたら、どうするの?
先生 独立国家には「自衛権」があると考えられています。外国からの違法な武力攻撃に対し、国を守るために必要な一定の実力を行使する権利ですね。憲法には明記されていませんが、多くの学者は、第9条の下でも「自衛権はある」と考えています。政府も同じ見解ですね。
憲太 2項の「戦力」って何?
先生 外の敵の攻撃から国土を防衛する目的で、それにふさわしい人員や装備を備えた実力部隊を指す、というのが、多くの憲法学者の考えです。
憲太 じゃあ自衛隊は?
先生 この考えに立てば、「戦力」にあたり、違憲と考えられます。ただ、政府は「自衛のための必要最小限度の実力組織」で、「戦力ではない」としています。
憲太 難しい。最近、「集団的自衛権」という言葉をよく聞くね。
先生 日本と関係の深い国が武力攻撃を受けた際、その国を守るために共同で防衛にあたる権利ですね。政府は集団的自衛権について「持っているが、使えない」としてきました。つまり、自衛権はある。しかし、第9条が戦力の保持を禁じている以上、自衛権の行使も「戦力」にあたらない「必要最小限度の実力行使」にとどめるべきだ。だから、集団的自衛権の行使までは許されない、という解釈です。安倍晋三首相は集団的自衛権が行使できるように、この解釈を変えられないかと検討しています。
憲太 2項は交戦権も認めていないね。
先生 戦争では相手国の兵士を殺したり、軍事施設を破壊したりします。交戦権とは、こうした国際法で認められた交戦国の権利を指すと考えられています。これも「戦争の放棄」や「戦力の不保持」を定めた規定、という意見もありますね。=次回は自民党案第9条です
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<現行憲法
第9条2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。


<自民案>
第9条2 前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない。