「憲法を読む」(毎日新聞連載)

憲法をよむ:/8 国防軍 自衛権行使に制約なくす(毎日新聞 2013年11月29日(金))

<戦後70年に向けて>
憲太君 自民党案は軍隊を持つと、はっきり書いたんだね。
先生 「戦力の不保持」を定めた憲法下で自衛隊ができてから、その位置付けや活動の限界は論議になってきましたから。自民党案第9条2項をもう一度読んでみてください。
憲太 「前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない」
先生 「戦力の不保持」や「交戦権の否認」は消えて自衛権が明記されましたね。前項の規定とは1項の「戦争の放棄」です。
憲太 「戦力の不保持」があるからいろいろと制約があったんだよね。集団的自衛権はどうなったの?
先生 自民党「草案Q&A」は「自衛権の行使には何らの制約もないように規定した」としています。
憲太 国防軍の活動は自衛隊より広がる?
先生 自衛隊は「必要最小限度の実力」なので、海外で米軍と一緒に武力行使はできませんでしたね。自民党案第9条の2では、国防軍は「国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動」を行うと書かれ、「Q&A」で「その際、武力行使は可能」とされています。
憲太 「公の秩序を維持し」という言葉もあるね。
先生 「治安出動」ですね。現在の自衛隊法でも「警察力では治安を維持できない場合」に自衛隊の出動が認められていますが、自民党案では憲法に軍の活動として明記されることになります。
憲太 「軍法会議」もできるんだ。
先生 兵士らが出動命令を拒んだり、軍の秘密を漏らしたりすると、裁判を受けることになりますね。第9条の3では、国が「国民と協力して」領土を守るとされています。=次回は第10、11条。12月3日掲載です。
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<自民案(新設)>
第9条の2
 1 我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため、内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を保持する。
 3 国防軍は、第1項に規定する任務を遂行するための活動のほか、法律の定めるところにより、国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動及び公の秩序を維持し、又(また)は国民の生命若(も)しくは自由を守るための活動を行うことができる。(2、4〜5省略)