「憲法を読む」(毎日新聞連載)

憲法をよむ:/9 第10、11条 人権規定変更で制限の恐れ(毎日新聞 2013年12月3日(火))

<戦後70年に向けて>
憲太君 第3章は「基本的人権の尊重」についてだね。
先生 憲法の3大原理の一つでしたね。第3章は「国民の権利及び義務」として、第40条まで個別の権利や自由が定められています。第10条は、まず「国民」とは何かを定めていますね。
憲太 人権って古くからあるのかな?
先生 17世紀にイギリス人思想家のロックらが打ち出した考え方が基になっています。中世社会では国王が絶対的な権力を持っていました。ロックは「人間は生まれながらにして自由、平等で、生命や財産を拘束されない権利を持っている」と考えたんですね。そうした「自然権」「天賦(てんぷ)人権」と呼ばれる思想が第11条の基礎にあります。
憲太 享有(きょうゆう)って?
先生 「生まれながらに持っている」という意味ですね。
憲太 次に「基本的人権は……現在及び将来の国民に与へられる」とあるね。
先生 憲法天皇から与えられるという意味ではありませんよ。自然権の思想で言うと、「天や神、自然から与えられる」。人間である以上、生まれながらに人権を持っているということです。
憲太 自民党案はここが消えてるんだね。
先生 自民党「草案Q&A」は「人権規定も、我が国の歴史、文化、伝統を踏まえたものが必要」「現行憲法には、西欧の天賦人権説に基づいて規定されているものが散見される」としていますね。
憲太 今の憲法とは考え方が違うのかな?
先生 大阪大大学院の鈴木秀美教授は「日本流に人権を規定しようということだが、人権は憲法で与えられたものだとすれば、憲法を変えることで容易に人権を制限できてしまう」と指摘しています。=次回は第12条です
==============
<現行憲法
第11条 国民は、すべての基本的人権の享有(きょうゆう)を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。


<自民案>
第11条 国民は、全ての基本的人権を享有する。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利である。