「憲法を読む」(毎日新聞連載)

憲法をよむ:/10 第12条 自由と権利「公益のため制限」(毎日新聞 2013年12月4日(水))

<戦後70年に向けて>
憲太君 1文目は背筋がピンとなる文章だね。
先生 自由と権利を持ち続けるためには「国民の不断の努力」、すなわち絶えず努力することが必要ですよ、と書かれています。
憲太 17世紀のイギリス人思想家、ロックらの自然権思想が基になっていると。
先生 そうした思想は18世紀、国王の圧政に対する市民革命を経て、アメリカ独立宣言などの形になりました。「全国民は平等」という今の憲法ができたのは、さらに後です。
憲太 「公共の福祉」って難しいね。
先生 第13条にも同じ言葉が登場します。人は一人で生きているわけではないので、他との関係で人権が制限される場合があります。それを調整する原理が「公共の福祉」と考えられていますね。
憲太 自民党案では「公益及び公の秩序」に変わっているけど。
先生 自民党「草案Q&A」では「改正により、基本的人権の制約は、人権相互の衝突の場合に限られるものではないことを明らかにしたものです」としていますね。
憲太 どういうこと?
先生 「公共の福祉」という言葉では、「どんな場合に人権が制限されるのか」という点で議論があります。憲法学者の間では「人権相互の衝突」、つまり「他の人の権利とぶつかった時」のみ制限されるという考えが一般的です。一方で「では国家や国民全体の利益のために制限はできないのか」という議論があり、自民党案の変更はそうした議論を反映したものと言えます。=次回は第13条です
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<現行憲法
第12条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又(また)、国民は、これを濫用(らんよう)してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。


<自民案>
第12条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力により、保持されなければならない。国民は、これを濫用してはならず、自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない。