「憲法を読む」(毎日新聞連載)

憲法をよむ:/11 第13条 「個性」持つ人が平等に尊重(毎日新聞 2013年12月5日(木))

<戦後70年に向けて>
憲太君 「すべて国民は、個人として尊重される」とあるけど、当然だよね。
先生 第二次世界大戦中は「国民は国家のためにある」とされ、多くの国民が犠牲になりました。自由や権利も制限され、「個人の尊重」が当然ではなかったんですね。戦後の憲法は「一人一人が最も大事」と考え、国民主権基本的人権の尊重を定めました。第13条は憲法の根本理念を示した条文と言えます。
憲太 大事な条文なんだ。自民党案は「個人」が「人」になっているね。
先生 大きな違いを感じないかもしれませんが、「個人の尊重」とは、別々の「個性」を持った人間が平等に尊重されるということです。慶応大の小林節教授は「一人一人の個性を消し、国家が決めた一つの色に染まることを求める全体主義につながる」と指摘しています。
憲太 「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」は「最大の尊重を必要とする」って。
先生 人間が人間として生活するために欠かせない権利だからですね。憲法はいろいろな権利や自由を挙げていますが、時代とともに、条文では対応できない問題も起きます。新しい人権を保障する根拠とされるのが、この「幸福追求権」です。
憲太 どんな権利があるの?
先生 「プライバシーの侵害」という言葉を聞いたことがありますよね。最高裁判例でも、承諾なしに自分の容貌を撮影されない自由などは、第13条から認められる権利とされています。=次回は第14条です
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<現行憲法
第13条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。


<自民案>
第13条 全て国民は、人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公益及び公の秩序に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大限に尊重されなければならない。