広く知る必要のあることば

sava95さんの「覚え書き」(2006年11月9日分)経由で知った。しっかり読んでおきたい。


高橋哲哉氏意見陳述(教基特名古屋地方公聴会)(「保坂展人のどこどこ日記」2006年11月9日分)

(前略)
安倍晋三首相は、今臨時国会の最大の課題にこの教育基本法改正を掲げておりますが、今なぜ現行法を改正しなければならないのか、その理由は今もって不明です。
(中略)
教育の主体をこの国の主権者である「国民」から「国家」へと変えてしまう改正案です。政府法案では、教育の主体と教育の目的も国家になる。国家による国家のための教育、国家の道具としての教育をつくりだそうとする法案だと言わざるをえません。
法案の第2条「教育の目標」に「愛国心」が入ったのも、この枠組みの中にあります。安倍首相は一貫して教育基本法に「愛国心」を入れたいと言ってきましたが、その安倍氏が「国が危機に瀕したときに命を捧げるという人がいなければ、この国は成り立っていかない」(2004年11月27日)と述べていることは何を意味するのでしょうか。
(中略)
国家が愛国心をはじめ多数の道徳規範を「教育の目標」として定めた法案第2条は、21世紀の教育勅語とも言うべき趣があり、それによってこの法律は、「国家道徳洗脳基本法」と称されても仕方のないものになってしまうでしょう。
(中略)
政府提出の教育基本法案は、現行法の精神をまさに「根本から書き換え」ようとしています。主権者である「国民」による「子どもたち」のための教育を、「国家」による「国家」のための教育に変えようとするものです。私たちは、「いかなる反動の嵐が訪れようとも、何人も教育基本法の精神を根本的に書き換えることはできないであろう」と南原繁が述べた意味を、よくよく考え直してみる必要があります。教育は国家の道具ではありません。子どもたちも国家の道具ではありません。私は、教育と子どもたちを国家の道具にしてしまいかねない政府法案に反対します。



先日の朝日新聞夕刊に載った立花隆氏のものもそうだが、こうしたキチンとした意見がもっと広く読まれて然るべきだと思う。憲法にしろ教基法にしろ、改訂側が言い募る理念も根拠もないインチキな必要性とか改訂理由とかを鵜呑みにしてしまいそうになる現状はとてもおかしなものだ。何が問題なのかをはっきりさせておかないと、「少年犯罪が多発・凶悪化している」「教育現場が荒れて現行教基法では対応できない」「戦後教育が歪んでいたために個人主義や男女平等が行き過ぎてしまった」などというくだらないウソも見抜けずに「そうだったのか」「なんとかしなくちゃ」と騙されてしまう。
そんなことがないように、一部の熱心な人たちだけが「本当はこういうことなのに」と言っていても仕方がないと切実に思うので、目にした人はぜひ読んでほしいと思う。


わたしの教育再生 1「普遍的価値持つ基本法 改正諭の褒に国家主義立花隆朝日新聞 2006年11月6日(月)夕刊)

(前略)
教育基本法に書かれていることは、「教育の目的」(第1条)、「教育の方針」(第2条)をはじめ、すべて極めて当たり前のことだ。急いで改正しなければならない理由はどこにもない。特に教育目的に書かれていることは、人類社会が長きにわたって普遍的価値として認めてきたことだ。
そこにあるのは、「人格の完成」「平和国家」「真理と正義」「個人の価値」「勤労と責任の重視」「自主的精神」「心身の健康」など、誰も文句のつけようがない目的だ。
(中略)
教育基本法は、教育を時の政府の国家目的の奴隷から解放した。国家以前から存在し、国家の上位概念たる人類共通の普遍的価値への奉仕者に変えた。
それは何かといえば、ヒューマニズムである。個人の尊厳であり、基本的人権であり、自由である。現行教育基本法の中心概念である「人格主義」である。
教育は国家に奉仕すべきでなく、国家が教育に奉仕すべきなのだ。国家主義者安倍首相は、再び教育を国家への奉仕者に変えようとしている。



それから、ピーター・フランクル氏のわかりやすいことば。


わたしの教育再生 2「英語の前に自己表現力 愛国は国粋主義と違う」ピーター・フランクル朝日新聞 2006年11月7日(火)夕刊)

(前略)
安倍首相の「美しい国へ」や、藤原正彦氏の「国家の品格」とか、何冊もこういう本を読んだけど、これらの本は愛国心と言いながら、国粋主義の思想。
(中略)
愛国も国粋も、自分の国を愛する気持ちは一緒だけど、愛国主義者は、自分の主観的気持ちだと認めている。でも、国粋主義者は客観的だと思っている。いつも外にスケープゴートを探して、何かをやり玉に挙げる。日本はいいけれどもほかの国は悪いとか、都合の良い比較になっている。
自分のお母さんを愛しているのは自分のお母さんだから。世界で一番料理がうまくて、美しくて、贅いからではない。国についても、母なる国、母国、そういう愛の気持ちは大切。
日本には優しい人、美しい場所、すばらしい文化がたくさんある。そういうことを子どもたちに感じさせるように校外活動を増やせばいい。国を愛しなさいとか、毎朝君が代を斉暗しなさいとか、強制的なやり方ではなくてね。