「恥ずかしい国へ」慰安婦問題

そもそもの発端はこの記事。


従軍慰安婦「強制の証拠ない」=河野談話の見直し否定せず−安倍首相(時事ドットコム 2007年3月1日(木))

安倍晋三首相は1日夜、従軍慰安婦問題を謝罪した1993年の河野洋平官房長官談話について「当初定義されていた強制性を裏付ける証拠がなかったのは事実だ」と述べ、旧日本軍が従軍慰安婦を強制的に集めて管理した証拠はないとの認識を示した。また、談話見直しの必要性に関しては「定義が大きく変わったことを前提に考えなければならない」と語り、否定しなかった。首相官邸で記者団の質問に答えた。
ただ、この発言について首相周辺は「国会で答弁した通りのことを言っただけで、これまでの政府方針と何も変わっていない」と指摘、同談話の見直しを表明したものではないと強調。塩崎恭久官房長官も同日の記者会見で「談話を受け継いでいくのが政府の立場だ」と語った。



この発言の前提には、米国議会の謝罪要求決議やら党内部の動きが関連しているのではないかと考えられるだろう。何しろ、「有志」の中にお抱えの補佐官も参加しているのだから、簡単に見過ごすわけにはいかない。


軍の慰安婦強制連行なかった…自民有志が見解表明要求(YOMIURI ON-LINE 2007年3月1日(木))

いわゆる従軍慰安婦問題に関する1993年の河野洋平官房長官談話の見直しを求める自民党の(会長=中山成彬・元文部科学相)の提言案が28日、判明した。
政府に対し、「本人の意思に反する業者の強制連行はあったかもしれないが、軍や官憲による強制連行はなかった」との見解の表明を求めている。1日に正式決定し、首相官邸に申し入れる。
慰安婦への「お詫(わ)びと反省」を表明した河野談話は、旧日本軍や官憲の強制連行を認めたような記述となっている。提言案は「根拠は元慰安婦からの聞き取り調査だけで、証拠資料は見つかっていない」と指摘している。
また、「従軍慰安婦」の呼称から「従軍」の削除を提唱。安倍首相が河野談話の「継承」を表明したため、談話の抜本的な書き換え要求は見送った。
慰安婦問題を巡り、米下院に提出された対日非難決議案に関連し、「河野談話は日本のイメージを失墜させ、事実誤認や悪意に満ちた日本批判を招いている」として、日本政府の反論も訴えている。



会長の中山氏は文科相在任中の2004〜05年にかけて「歴史教科書から従軍慰安婦や強制連行という言葉が減ったのは良かった」と発言したり「『従軍慰安婦』という言葉が戦時中はなかったことを強調する支援者からのメール」を講演で披露したりして謝罪に追い込まれている。また、現内閣で内閣副官房長官下村博文氏も中山氏を支持する発言をした。「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」(教科書議連)には中山氏や下村氏の他、安倍首相、中川自民党政調会長郵政民営化復党問題で名前の挙がる平沼氏、古屋氏、衛藤氏らも関連しているらしい。超党派の会合には松沢成文神奈川県知事や上田清司埼玉県知事、中田宏横浜市長も参加していたことがあるようだ。
安倍氏に近しい人物らの関連している団体の動きに呼応してしまう、というのは大いにありそうだ。ましてや内閣内にもそうした人物がいるならなおさらだし、それらの人々を党内の異論を押し切って復党させている首相だ。実は着々と体制を整える算段をしている最中かもしれない。
先日、埼玉県ではこんなこともあった。


上田知事の従軍慰安婦発言:元慰安婦、知事と面談 /埼玉(MSN-Mainichi INTERACTIVE 007年3月2日(金))

上田清司知事が昨年6月の県議会で「慰安婦はいたが、従軍慰安婦はいなかった」と発言したことについて、上田知事に面会を求めていた韓国人女性のイ・ヨンスさん(78)が1日、県庁で知事と面談した。
韓国テグ市出身のイさんは16歳で日本兵に強制連行され、台湾で慰安婦としての生活を強いられたという。面談は双方の通訳2人を介し、非公開で約20分間行われた。
2人は面談後、別々に会見し、イさんは「私は被害者。知事にそれを言い、私を見せたかった」と述べた。上田知事は「イさんは私が『慰安婦がいない』と発言したと思っていたが、私は言っていない。異常な戦争状態では強制も当然ありえるという認識も持っていると説明した」と話した上で、「軍が女性を徴用したという証拠は見つかっておらず、従軍という言葉は望ましくない」と従来の主張を繰り返した。また、イさんには「お気の毒と声をかけた」と言う。
06年10月、支援者とイさんが面会を求めて県議会議場に入ろうとする上田知事の前に立ちふさがり、知事が声を荒らげたことについては、知事は「議会開会中は議会最優先で誰とも会えないと説明し、理解していただいたと思う」と述べた。



他社の記事に詳報を待ったけれど、今のところ見つけることができない。毎日新聞のこの記事だけではほとんど上田知事のことしかわからず、一方的な見解が述べられているに過ぎない。内容は上の二つの記事と「軍関与の証拠はない」という点が呼応している。詳細は窺い知れないが、言葉の壁を越えて理解し合えるような面談ではなかったことが垣間見えるようだ。
安倍“仲良し”内閣はどうも、このアジアの問題について政府見解をも覆して反動的姿勢を打ち出そうとしているようだ。自らの過去について真摯に振り返り、必要な謝罪や補償についてはできる限りきちんと清算してこそ、その後の「美しい国」へ一歩を踏み出して行けるというものだ。
子どもの言い分のように「やってない」「証拠もない」などと言い張って*1いるうちは、「恥ずかしい国」と揶揄されても仕方がないのではないか。まったく情けない限りだ。

*1:ていうか、こうした発言や姿勢を見て、子どもがマネをするってことだな。何だ、全然教育なってないじゃん。