「基本的には継承」でも「強制性の証拠はなかった」

内外に波紋を投げかけたものだから、また中途半端な態度に出た。


参院予算委:「強制性裏付けない」 河野談話で首相(MSN-Mainichi INTERACTIVE 2007年3月5日(月))

(前略)
首相は従軍慰安婦問題で旧日本軍の関与を認めた93年の河野洋平官房長官談話について、「基本的に継承する」としながらも「狭義の意味の(軍の)強制性は、それを裏付ける証言はなかった」と強調した。
(中略)
首相は狭義の強制性を「官憲が家に押し入って、人さらいのごとく連れて行く」行為と説明。「慰安婦狩りのような官憲による強制連行的なものがあったと証明する証言はない」と繰り返した。
首相は答弁で、「ご本人が進んでそういう道(従軍慰安婦)に進もうと思った方はおそらくおられなかったと思う。間に入った業者が事実上強制していたケースもあった」と指摘。強制したのは民間業者であり、「軍の要請」は「狭義の強制」に含まれないとの認識を示した。



あくまで「証明する証言」とか「文書」が存在しないというだけであって、この点は「河野談話」でも指摘されていることだが、だからといって「やってなかった」というのは理解の一助にもなりやしない。「狭義」だろうが「広義」だろうが関係なく、関与があったかどうかが問題であって、あったならあったでちゃんとそれを認識し、反省すべきところは反省する必要があるだろう。
毎日以外の各紙の論調は以下の通り。


米決議あっても「謝罪しない」安倍首相、慰安婦問題で(asahi.com 2007年3月5日(月))

(前略)
首相は「官憲が家に押し入って連れて行くという強制はなかった」とした上で「業者が間に入って事実上強制したこともあった。広義の解釈での強制性があったということではないか」と説明。「国会の場でこういう議論を延々とするのが生産的とは思わない」とも語った。
首相は、米下院で採択の動きのある決議案について「客観的事実に基づいていない。日本政府のこれまでの対応も踏まえていない」と指摘。「米議会内の一部議員の動きを受けて引き続き我が国の立場の理解を得るための努力を行っている」と説明した。
また、塩崎官房長官は同日午前の記者会見で、首相の慰安婦問題をめぐる発言について「河野官房長官談話の見直しを示唆し、談話に矛盾しているということは、まったく当たらない。(批判は)首相の発言に対する適切な解釈のもとに行われたものではないような感じがする」と語った。
(後略)



河野談話の「基本的継承」首相改めて表明…参院予算委(YOMIURI ON-LINE 2007年3月5日(月))

(前略)
安倍首相は、いわゆる従軍慰安婦問題に関連し、元慰安婦への「おわびと反省」を表明した1993年の河野洋平官房長官談話を、「基本的に継承していく」と改めて表明した。
その上で首相は、「狭義の意味での強制性を裏付ける証言はなかった。官憲が人さらいのごとく連れて行くという強制性はなかった。いわば『慰安婦狩り』のような強制連行的なものがあったということを証明する証言はない」と述べ、旧日本軍や官憲による強制連行を示す証拠はないとの見解を改めて示した。
また、「そのときの経済状況もあった。本人が進んでそういう道に進もうと思った方はおそらくいない。間に入った業者が事実上強制していたケースもあった。広義の解釈では強制性があった」と述べた。
慰安婦問題で日本政府に謝罪を求める米下院の決議案に関しては、「決議があったからといって我々は謝罪することはない。決議案は客観的な事実に基づいていない。引き続き理解を得るための努力を行っている」と語った。
(後略)



首相、「謝罪の必要なし」 慰安婦問題、米下院で決議されても(Sankei Web 2007年3月5日(月))

安倍晋三首相は5日午前の参院予算委員会で、米下院に提出された慰安婦問題をめぐる対日非難決議案について、「決議案は客観的事実に基づいていない。決議があっても謝罪することはない」と述べ、決議案に強い不快感を示した。
また、首相は、慰安婦問題を謝罪した平成5年の「河野洋平官房長官談話」について「基本的に継承していく」と明言。その上で「官憲が家に乗り込んで人さらいのように連れて行くような強制性はなかった」と述べ、狭義の強制性を重ねて否定。米下院の公聴会で証言した元慰安婦の証言についても「裏付けのある証言はない」と述べた。
民主党小川敏夫参院幹事長への答弁。小川氏が「きちんと謝罪しないと、日本が戦争に対する反省をしていないと受け取られる」と主張したのに対し、首相は「戦後60年の日本の歩みは高く評価されてきた。小川氏は日本の歩みを貶(おとし)めようとしている」と強く反発。「小川氏は決議案が正しいと思っているのか」と切り返す場面もあった。



首相の「子どもじみた」姿勢を「はからずも」正しく伝える産経新聞の記事はなかなか。