なんでも「家庭」「親」のセイにするな

国民健康・栄養調査:中学生の25%、一人で朝食 「普通」体形の子供も減る(MSN-Mainichi INTERACTIVE 2007年5月17日(木))

(前略)
調査は05年11月に3588世帯に実施。朝食は9割以上の小中学生が毎日取っていたが、子供だけで食べている割合は、小学校低学年41%▽同高学年40%▽中学生43%で前回調査(93年)より1〜14ポイント上昇した。初めて調査した「一人で食べる」割合は、低学年14%▽高学年12%▽中学生25%だった。夕食を午後7時以降に取る子供は46%で、前回調査より10ポイント高かった。
子供の体形は「普通」が男女とも57%(前回60%)で、「肥満」「やせ過ぎ」の傾向がそれぞれ2割前後に上る。特に男子中学生は「普通」が半数以下の48%(同58%)で、3人に1人が「やせぎみ・やせ過ぎ」と判定された。運動の量は総じて増えていることから、厚労省は「体形のばらつきは食生活の影響が大きいのでは」と分析する。
(後略)



「朝食は9割以上の小中学生が毎日取っていた」との結果はまず、喜ばしいコトじゃないか。ちょっと前には「朝食を摂らない子が多い」と言っていたはずで、実はそんなことなかった、ということにならないのかしら。それとも2006年には格段に朝食を摂らない例が増えちゃったということなんだろうか。一貫性のある調査なのか、推移については何も書かれていないのでわからない。
「体形のばらつきは食生活の影響が大きいのでは」と「分析する」というのにはずいぶん納得しがたいモノがある。統計というのは相関についてきちんと検定しなければ何も言えないはずで、それが為されていないのであればタダの憶測だ。「抽出より全数調査が正確」などと無学を披瀝した某大臣にも呆れたが、根拠もなく結論を誘導し示唆的なことを言明してしまう厚労省の態度には大いに疑問がある。そして、それをそのまま垂れ流してしまう報道にも首を傾げざるを得ない。
種々の事件や不安定な教育環境に晒されて不安や不満を募らせているところに出される「調査結果」は、知らされ方によって受け取る側の認識も大きく変わるだろう。厚労省の言質からにじみ出てくるのは「朝ご飯を含め、食事は家族みんな一緒であるべき。それを怠ると子どもの体形に悪影響がある」という、今のところ根拠も何も明らかにされていない、いわばトンデモな結論だ。「朝食抜き」の罪科については去年アレだけいい加減な調査結果が垂れ流されているから、今回もこの結果をベースに「やっぱり成績も悪かった」だの「性意識が乱れている」とか好き勝手なことを言い始めるんじゃなかろうか。
食事時に親が家にいられず子どもが一人で食事をしているという状況は、すべてが家庭や親の責任ではない。そうせざるを得ない事情がある、ということに思い至らなければ、解決の端緒に着くことすらできない。厚労省が本気で「家族一緒の食事」を実現させたいのなら、何でもかんでもこうして「家庭」とか「親」に責任を押しつけるのではなく、例えばこうした就業環境の改善を国民の健康に結び付けていくというのがスジだろう。これが厚労省のそもそものミッションではなかったか。
どうも、文科省にしろ厚労省にしろ、他の省庁や統括する行政府も含め、自らの為すべきことをほったらかして人のセイにする態度はいい加減にしてほしいものだ。こうした態度は議員や政党、経済界などにも蔓延している。自らの職責にほっかむりし、他に責任を押しつける。こんなのに任せておいたら本当にとんでもないことになる。
参院選ではぜひ大きな杭を打ち込んで、こうした流れを変えていく必要があると思う。