ことば

渡辺淳一「私と愛国(2) - 核は自分の感性や情念 改めて考える必要ない」(朝日新聞2006年5月25日(木)夕刊)

愛国心とは、自分の身近な家族、恋人への愛情といった基礎的な単位から、住んでいる村や町、そして日本全体への愛へと、ゆっくり広がり、育まれていくものだと思う。特攻隊の隊員も、愛する家族のいるこの国を守りたいと願って逝ったのではないか。 愛国心の…

太田光「私と愛国(1) - 表現しきれぬ思い大切 いろんな心共存がいい」(朝日新聞2006年5月24日(水)夕刊)

愛国心を考えようって動き、出ないよりは出てきた方がいい。憲法改正や靖国、米国との関係、ちょっと横に置いとこうって問題が戦後山積みになってる。愛国心も立ち止まってもがいてみることが必要だと思います。 でも、あの言葉、この言葉と各党が争ってるの…

思潮21『老成を気取る前に「平和」「公」自問を - 団塊の世代へ』寺島実郎(朝日新聞2006年2006年4月4日(火)夕刊)

思潮21『老成を気取る前に「平和」「公」自問を - 団塊の世代へ』寺島実郎(朝日新聞2006年4月4日(火)夕刊) 二〇〇七年間題、団塊の世代の大量定年退職のインパクトをそういうのだそうだ。このことを他人事では語れない。私自身の世代の問題だからである。…

大江健三郎「伝える言葉 - 面白く話す - 聞き手に恵まれた幼少期」(朝日新聞2006年2月14日(火)朝刊)

大江健三郎「伝える言葉 - 面白く話す - 聞き手に恵まれた幼少期」(朝日新聞2006年2月14日(火)朝刊) その鼠(ねずみ)が私らの生活に入って来たのは、半年ほど前のことです。家族が寝静まった後、仕事に一区切りつけて台所に飲みものを取りに入ると、流し…

丸谷才一「袖のボタン - 守るも攻むるも」(朝日新聞2006年2月7日(火)朝刊)

丸谷才一「袖のボタン - 守るも攻むるも」(朝日新聞2006年2月7日(火)朝刊) 日本海軍は奇妙な記録の保持者である。みずから爆沈した軍艦が五隻もあって、これは世界有数なのだ。自慢できることではないので、あまり知られていないと思うから、艦名、事故の…

「高木敏子さんからあなたへ - 過ち繰り返さぬよう 心の輪を結び広げて」(朝日新聞2006年1月28日(土)朝刊)

早いもので、敗戦からもう60年がたちました。1945年3月の東京大空襲で、両国に住んでいた母と2人の妹を、8月に神奈川県二宮駅で起きた米軍の機銃掃射で父を亡くした私は当時13歳。以来ずっと、戦争だけは二度と起こしてはならないという気持ちで生きてきまし…

時流自論『「愛国心」と「愛民心」』藤原新也(朝日新聞2006年1月23日(月)朝刊)

時流自論『「愛国心」と「愛民心」』藤原新也(朝日新聞2006年1月23日(月)朝刊) 「最近はこうして街を走っていても門松をみかけませんなあ。日の丸もない。日本の伝統を守る気持ちも愛国心も、地に落ちたもんですよ」 タクシーで都内を走っていると、年配の…

主体的日本とは何か「独自の情報基盤で多様な政策選択を」(財)日本総合研究所理事長 寺島実郎(朝日新聞2006年1月16日(月)夕刊)

主体的日本とは何か「独自の情報基盤で多様な政策選択を」(財)日本総合研究所理事長 寺島実郎(朝日新聞2006年1月16日(月)夕刊) 広島の女児殺繋事件の犯人が入国ビザ偽装のペルー人だったことにより、ペルー人への日本でのイメージは極端に悪化している。…

今、愛し合うとき - 10年ぶりの新作 スティービー・ワンダーさんに聞く「私の神は戦争を考えない」(朝日新聞2005年11月23日(水)朝刊)

今、愛し合うとき - 10年ぶりの新作 スティービー・ワンダーさんに聞く「私の神は戦争を考えない」(朝日新聞2005年11月23日(水)朝刊) 新作「タイム・トゥ・ラヴ」は、28枚目のオリジナルアルバム。本来はもっと早い完成が見込まれていたが、親友で大先輩の…

加藤周一「夕陽妄語 − 『孫子』再訪」(朝日新聞2005年11月22日(月)夕刊)

加藤周一「夕陽妄語 − 『孫子』再訪」(朝日新聞2005年11月22日(月)夕刊) その頃(一九三八年)、東京の巷(ちまた)には軍歌があふれていた。そこで石川淳は小説「マルスの歌」を書いて戦争を批判したが、軍国日本の検閲は、「反戦思想を理由としてその本…

大江健三郎「伝える言葉 - 「知る」と「わかる」 - 反復し「さとる」足場に」(朝日新聞2005年11月8日(火)朝刊)

大江健三郎「伝える言葉 - 「知る」と「わかる」 - 反復し「さとる」足場に」(朝日新聞2005年11月8日(火)朝刊) 宮城の高校の十周年記念の催しに話しに行きました。少子化が進むなかで新設された公立高校ということに関心をひかれたのと、依頼の封筒に、校…

「井筒和幸さんからあなたへ - 隣のカノジョに教えてやって この世の狂気を」(朝日新聞2005年9月17日(土)朝刊)

「井筒和幸さんからあなたへ - 隣のカノジョに教えてやって この世の狂気を」(朝日新聞2005年9月17日(土)朝刊) 毎度ご贔屓(ひいき)あずかりましておおきに、ですが、ボクが撮り綴ってきた映画を見たこともない10代のアンタたちが何百万人もウジャウジャ…

「坂本龍一さんからあなたへ - なぜぼくら人間は音楽をやるのか」(朝日新聞2005年9月10日(土)朝刊)

「坂本龍一さんからあなたへ - なぜぼくら人間は音楽をやるのか」(朝日新聞2005年9月10日(土)朝刊) なぜ人間は音楽を聴いたり、歌ったり、演奏したり、作ったりするのだろう? ぼくたちホモ・サピエンスの先祖はいつから、なぜ音楽をやるようになったのだ…

梅原猛「反時代的密語 - アニミズムと生物学」(朝日新聞2005年8月23日(火)朝刊)

梅原猛「反時代的密語 - アニミズムと生物学」(朝日新聞2005年8月23日(火)朝刊) 最近、アニミズムの復権ということが囁(ささや)かれる。十九世紀のイギリスの人類学者、E・B・タイラーは、アニマすなわち精霊が人間ばかりかすべての動植物の中にも存在す…

大江健三郎「伝える言葉 - 受忍しない - 戦争、記憶し続ける力を」(朝日新聞2005年8月16日(火)朝刊)

大江健三郎「伝える言葉 - 受忍しない - 戦争、記憶し続ける力を」(朝日新聞2005年8月16日(火)朝刊) 一九四五年三月、米軍が沖縄列島ではじめて上陸した慶良間諸島で、住民たちが集団で自殺するということが起こりました。渡嘉敷島で三百人以上、座間味島…

梅原猛「反時代的密語 - 仏教の道徳」(朝日新聞2005年6月21日(火)朝刊)

梅原猛「反時代的密語 - 仏教の道徳」(朝日新聞2005年6月21日(火)朝刊) 私は現在の日本人の道徳的退廃を深く憂慮するものである。日本人はもう一度、真剣に道徳について考えなければならないと思うが、それには日本人の心情を千年以上の間培ってきた仏教の…

大江健三郎「伝える言葉 - 協同する選択 - 歴史に根ざした展望を」(朝日新聞2005年6月14日(火)朝刊)

大江健三郎「伝える言葉 - 協同する選択 - 歴史に根ざした展望を」(朝日新聞2005年6月14日(火)朝刊) 十年ぶりに韓国へ行ってきました。ホテルの窓から見おろすソウル市庁舎前の広場は、大きい長円形の芝生がみたし、それはサッカーのワールドカップの国民…

加藤周一「夕陽妄語 − 「すれちがい」の果てに」(朝日新聞2005年6月23日(月)夕刊)

加藤周一「夕陽妄語 − 「すれちがい」の果てに」(朝日新聞2005年6月23日(月)夕刊) 今年の三月末に私は北京である歴史家と話していた。場所は清華大学の構内、窓からは静かな中庭の木立が見えた。しかし、会話の内容は、必ずしも静かなものではなかった。日…

梅原猛「反時代的密語 - 日本の伝統とは何か」(朝日新聞2005年5月17日(火)朝刊)

梅原猛「反時代的密語 - 日本の伝統とは何か」(朝日新聞2005年5月17日(火)朝刊) 近頃、教育基本法には伝統の尊重ということがうたわれていないので教育基本法を憲法改正に先立って改正すべきであると主張する人がいる。その人が伝統というものをどう考えて…

加藤周一「夕陽妄語 − 60年前東京の夜」(朝日新聞2005年3月24日(木)夕刊)

加藤周一「夕陽妄語 − 60年前東京の夜」(朝日新聞2005年3月24日(木)夕刊) 一九四五年三月一〇日に、米軍のB29はおよそ二時間半にわたって東京を爆撃した。焼夷弾(しょういだん)による波状絨毯(じゅうたん)爆撃。抵抗はほとんどなく、東京の半分は焼きっく…

愛川欽也「学童疎開への思い - 憲法尊ぶ座標 一度もぶれず」(朝日新聞2005年3月22日(火)夕刊)

愛川欽也「学童疎開への思い - 憲法尊ぶ座標 一度もぶれず」(朝日新聞2005年3月22日(火)夕刊) 終戦60年を振り返り東京都内で開かれた催しで、タレントの愛川欽也さん(70)が9日、「学童疎開時代への思い」と題し講演した。 東京・巣鴨出身。44年、国民学…

大江健三郎「伝える言葉 - 子供の記憶は正しい - 自由は「理性的な自己決定」」(朝日新聞2005年3月22日(火)朝刊)

大江健三郎「伝える言葉 - 子供の記憶は正しい - 自由は「理性的な自己決定」」(朝日新聞2005年3月22日(火)朝刊) 私が10歳の時、戦争が終わりました。12歳の時、憲法が施行されました。そのころのことを書くたび、本当に覚えているのかと疑いを示されるこ…

梅原猛「反時代的密語 - 何かが語っている」(朝日新聞2006年3月21日(火)朝刊)

梅原猛「反時代的密語 - 何かが語っている」(朝日新聞2006年3月21日(火)朝刊) 二年間ご愛読いただいた「反時代的密語」も今回で終わりになる。それゆえ私がなぜこの連載エッセーに「反時代的密語」という表題をつけたのかをここで語っておきたい。「反時代…

大江健三郎「伝える言葉 - 死者の声を聞こう - 昔の手紙 今もなお切実」(朝日新聞2006年3月14日(火)朝刊)

大江健三郎「伝える言葉 - 死者の声を聞こう - 昔の手紙 今もなお切実」(朝日新聞2006年3月14日(火)朝刊) 私のいまの年齢の渡辺一夫さんからいただいた手紙があります。先生の生前に出た本としては最後の、『世間噺・戦国の公妃−ジャンヌ・ダルプレの生涯…

渡辺えり子「おやじのせなか - 実家にあった光太郎の詩集」(朝日新聞2005年1月30日(日)朝刊)

幼いとき、父はよく枕元で宮沢賢治や高村光太郎の詩を読んでくれました。意味はよく分からなかったはれど、今でもいくつかの詩をそらんじることができます。 父は小学校の教師でした。観争で価値観が百八十度変わったのを目の当たりにして、「教育とはいった…

大江健三郎「伝える言葉 - 未来への未練 - 老人はなぜ悲しげなのか」(朝日新聞2005年1月25日(火)朝刊)

大江健三郎「伝える言葉 - 未来への未練 - 老人はなぜ悲しげなのか」(朝日新聞2005年1月25日(火)朝刊) 昨年暮れ、建築家原広司の展覧会「ディスクリート・シティ」を見に行きました。原さんは、友人になった若いころから、世界の多様な集落を調査しては、…

不戦支えた「留保の言葉」(朝日新聞 2005年1月13日(木) 朝刊「オピニオン」欄)

「私たちがいる所 6」戦後60年から 詩人 長田 弘 - 戦後60年というのは、昭和の戦争が終わってから60年が過ぎたという数え方です。60年というのは本卦(ほんけ)がえりして、ふたたび初心にかえるべきときです。そうであれば、昭和の戦争に敗れて戦争はし…

大江健三郎「伝える言葉 - 読みなおし続ける - 自分の命生かす共生を」(朝日新聞2004年11月16日(火)朝刊)

大江健三郎「伝える言葉 - 読みなおし続ける - 自分の命生かす共生を」(朝日新聞2004年11月16日(火)朝刊) 光が小さい曲を作り始めた最初から、五線紙のノートをすべて家内が保存してきました。三枚のCDを発行した後、光の関心が、作曲より音楽の理論を理…